奢るテレビ局

時事ネタを取り上げるのはあまり本意ではないのですが、今回のはさすがに黙っているわけにはいかないので。ええ。例のTBS「アッコにおまかせ」での初音ミク問題ですよ。

TBS系列で10月14日昼に放送された「アッコにおまかせ」で、歌声制作ソフト「初音ミク」を紹介した特集に対し、放送直後からネット上で批判が相次いでいる。結果的に同ソフトが「単なるオタクのおもちゃという扱い」と失望する声や、「ソフト自体とは無関係な『オタク』をおもしろおかしく取り上げるテレビの印象操作にはうんざり」といった声が多い。

TBS「アッコにおまかせ」の初音ミク特集に批判相次ぐ - ITmedia NEWS

確かに不特定多数が観ることが容易に想像されるテレビの取材で『俺の嫁』と言ったユーザーの人や、テレビ局の用意した原稿をそのまま読んでしまったメーカーも迂闊だったのかもしれません。TBSなんて信じるに値しないなんてそれこそ坂本弁護士の頃から周知の事実だし、最近でも不二家の問題とか、盗聴の問題とか、亀田家の問題とかあって忘れたとは言わせません。
だけど、問題はそこではなく、全ての批判はお蔵入りになった素材や裏話ではなく、今回完成品として世に公表されたものに対してなされるべきだと思います。
つまり、TBSにしてみれば「時間を割いて取材させてもらった」人々に対してあまりに失礼な扱いだろう、と。どうして取材されたクリプトン・フューチャー・メディアが謝罪しなければならないのでしょうか?
番組作りに協力してくれた人をただ笑うだけの番組を作って、取材された人はどう思うか。もちろん、最初から「ヘンなオタク」を笑う取材なら問題はないのですが、流行りものの取材に応じてくれた人――仕事に協力してくれた人を笑う、そこには同じコンテンツを作る人間としての尊敬の念はまるでなく、大企業既得権益という厚い壁に守られた人間が高いところから必死でよいものを提供しようと歯を食いしばってがんばっている人を見下しているようにしか見えません。しかし、真に見下されるべき、卑しい人間はこの番組スタッフであると思います。
古来から日本人は自分にできない職人芸を持つ人を尊敬して、また、職人達はその声に答えるべく切磋琢磨していくというサイクルができあがっているからこそ世界を驚かす様々な奇跡を起こしていたのだと私は固く信じています。しかし彼らからは「自分に理解のできないものは全て嘲笑の対象」という嫌らしい、醜い考えしかみてとれません。逆に、思考が凝り固まってしまった老体であるテレビという巨人が新しいメディアに嫉妬しているようにもみえます。
この話とは全然関係ないですが、昔の朝鮮では職人というのはレベルの低い人間のなるもので、差別の対象となっていたそうです。その人達が日本へ渡ってきてたいそう尊敬されるので次々に朝鮮から日本へ優れた職人達が渡ってきたという話を聞いたことがあります。その後日本は世界に冠たる技術立国になったわけです。この話とは全然関係ないですよ。本当のことかどうかも知りません。念のため。
まあ、少なくとも私は、私にできないことをやってのける人を尊敬する心を失わないでいたいと思います。それにしてもテレビというメディア、いろんなところでちょっとずつ敵を増やしていて……今はいいのかもしれないけどこの先どうするつもりなんだろう。何も考えていないだけのようにも見えますが。

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