開発スタッフを切る愚

 スクウェア・エニックスは2010年3月期中に、3805人いる社員の10〜15%を削減する。
(中略)
対象は開発部門や経営管理部門など全社にわたり、また、5月に買収した英Eidosの社員も含まれるとのことだ。

スクウェア・エニックス、人員を1割削減--「組織を有機的に動かせるサイズに」 - CNET Japan

スクエニの人員削減自体はかなり前から噂になっていたので特段驚くべきものでもない。が、この不景気の世の中、このような事例は今後も多く出るだろうから、書いておく。
ゲーム会社は一般的な企業と違って出す商品に一定のクオリティを保証するものではない。たとえば、コーラは時代によって多少の違いはあるけどほぼその味のクオリティは一定だし、家電もカタログスペックを見ればなんとなくどんな商品かわかってその予想が外れることもない。しかし、ゲームはプレイしてある程度進めないとどんなゲームなのか、面白いのかも判断できない特殊な商品だ。映画やアニメもそうだが単価がまるで違う。
つまり、ゲームという商品*1は誰にでも作れるわけではなく、ある特定の才能を持ち合わせた人間でないと作ることができない商品だと私は考えている。そのような商品を扱う会社の財産は有名ゲームのブランドではなく、そこにいる優秀な開発スタッフひとりひとりなのだ。その証拠に有名だったタイトルがたった1作のクソゲーによって消滅してしまうことはよくあるし、逆に独立したスタッフがいきなり新規タイトルでヒットを飛ばすこともある。プロデューサーだけ引っ張ってきて鳴かず飛ばずということもある。
その会社の最も大切な財産を涼しい顔をして切り落とすことのできるセンスが信じられない。おそらく、早期希望退職制度などを使って広範に退職者を募る*2のだろうけど、この方法はゲーム会社ではもっとも使ってはならない手だ。
なぜなら、前述したようにゲームという商品は優秀な開発者という職人の手によってのみ生産されるもので、どの会社もそのような人材を欲している。優秀な開発者はどの会社に行っても通用するわけで、退職金をもらって他社に移籍。逆に優秀でない人材は自分が他社でやっていけないことを知っているから絶対に退職しない。そうすると出がらしのような会社ができあがる。おいしいのは優秀な開発者と彼が移籍した他社。
今のスクエニを見ていると、かつて経営者が交代して金、金言い始めたゴンゾを思い浮かべる。あそこも優秀なスタッフをどんどん切っていった結果……。まあ、アニメとゲームではその産業構造も規模も異なるので一概には言えないが、今後スクエニのゲームを買うときはさらなる吟味が必要になってくるだろう。ゲーム会社の社員は証券会社と違っていい大学を出ていれば誰にでもできるというわけではないことをこの会社はわかっていない。

*1:正確には「面白いゲーム」という商品

*2:この辺法律とか用語に詳しくないので間違っていたらすいません